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●特 集● | 《技術資料》コンクール候補曲曲目解説 大阪府合唱祭のご案内 |
●特 集● |
よどこん資料
コンクール自由曲1Benedictio
【作曲家 Urmas Sisask について】
シサスクは1960年、バルト海に面したエストニアに生まれる(もちろんまだ生きてはります)。
エルネサクス(1908-1993)、V.トルミス(1930- )などの後を受け継ぐ重要な作曲家であると言われている。
また、神秘的・原始的(古風)な作風としても知られる。
シサスクは、天体観測を趣味とした祖母の導きで、幼い時から星の世界に魅入られていた。
現在ヤネダにある彼の仕事場は《星の塔〜ヤネダ音楽観測所〜》と名づけられ、そこで天体望遠鏡と鉛筆、消しゴムの助けを借りて、作曲に没頭しているらしい。
(彼を「アマチュア天文学者」と呼ぶものすら居るようだ)
余談であるが、彼は15歳の時、「星空」と名付けられたピアノ曲を発表している。
これ以降、彼のピアノ曲は全て「天体」に関するものがモチーフとなっている。
しかし彼は、ピアノ曲によって星座に関するエピソードや天文学的な意味における星座を表現しようとした訳ではない。
彼はピアノ曲を作曲することについて
「私は星座が呼び起こすムードやイメージに好奇心をそそられる。
(中略)ときとして星座の名前はイメージの妨げにさえなりうる」と語っている。
今回演奏する"Benedictio"は1991年の作品。
彼の合唱曲は、キリスト教のテキストに曲を付けたものが殆どのようである。
*尚、この作品についての詳しい解説は、松原千振・山田 茂・岡部申之 共著、『合唱名曲ガイド110 〜ア・カペラによる混声合唱〜』((株)音楽之友社、2001)に載っています。
【テクストについて】
"Benedictio"→「祝福」 Benedicat vos omnipotens Deus, 祝福して下さい 私たちに 全能の 神 Pater Filius et Spritus Sanctus. 父 息子 そして 霊 聖なる→「全能の神、父、子、そして聖霊が、私たちを祝福して下さいますように」
第39回大阪府合唱祭
(とき)2002年6月15日(土)午前11時〜
16日(日)午前10時30分〜
(ところ)コスモスシアター(貝塚市民文化会館)
〜講習会ご案内〜
・「大志万明子の発声講座」
15日・16日 講師:大志万明子
日本中で好評を博しているヴォイストレーナー、大志万明子先生をお迎えして、より合唱に適した発声法を教えていただきます。
伊東さんもオススメの“目からウロコ”発声講座です。ぜひぜひご参加ください!
・「日本語を生かした“語り”の歌い方」
15日 講師:高嶋昌二
歌の“語り”の部分は“サビ”に比べると手を抜かれがち。日本語の情感を生かした“語り”の部分の歌い方を、人生の応援歌「ファイト!」の前半を使って講習します。
・「思い切ってコンクール課題曲に挑戦!!」
15日 講師:飯沼京子
今年度の課題曲集から、谷川俊太郎作詩、松下耕作曲「静かな雨の夜に」(F4)を取り上げ、歌唱法という観点から講習します。男性も参加OK!
・「マネージャーの仕事って何?」〜指揮者・伴奏者は雇えても、リーダーは自前でなくては〜
16日 講師:安堵浩利
演奏面の指導者は外注することも可能ですが、合唱団の方向を決める運営、経営は自分達がしっかりする以外ありません。昨年度「大阪府青少年活動財団」で話題を呼んだ講座をダイジェスト版で。
・「指揮者ってたーいへん。学生指揮者、これから指揮をしてみたい人大集合!!」
16日 講師:伊東恵司
人前に立つということは、自分なりの「音楽」を「表現」できる場。バトンテクニックだけでなく「音楽の捉え方」「楽譜の整理の仕方」それを具体的な言葉にして合唱団員に伝えることが大切、という観点からの講習です。学生や一般の団内指揮者はもちろん、ファンの方も要check!
・「日本の合唱音楽の新しい可能性を探る」
〜その弐 さまざまな楽器とのコラボレーション〜
16日 講師:西岡茂樹
昨年に引き続き、新しい日本の合唱音楽の創造に挑戦し続けている作曲家の作品を紹介。
今年は和洋のさまざまなソロ楽器と合唱との組み合わせ、その演奏上の留意点を講習します。
〜連盟大合同のお知らせ〜
・連盟大合同合唱団「不死鳥(フェニックス)」
15日夕方 指揮:高嶋昌二
演奏曲目:「ファイト!」(中島みゆき作詩・作曲、高嶋昌二編曲)
とにかく元気の出る歌、中島みゆきの「ファイト!」を皆さんと一緒に。
・連盟大合同合唱団「はと」
16日昼 指揮:西岡茂樹
演奏曲目:
混声4部「空をかついで」
(石垣りん作詩、萩京子作曲)
童声2部「はじめのことば」
(さねとうあきら作詩、萩京子作曲)
童声2部+混声4部「木とともに人とともに」
(谷川俊太郎作詩、三善晃作曲)
子供と大人が一緒に歌い合う、連盟ならではのステージ!
・連盟大合同合唱団「ラブバード」
16日夕方 指揮:清原浩斗
演奏曲目:
(1)映画 天使にラブソングを…から
「ヘイル・ホーリー・クイーン(Hail Holy Queen)」(TRADITIONAL)
(2)混声合唱のための唱歌メドレー
〈ふるさとの四季〉から「故郷」
(高野辰之作詩、岡野貞一作曲、源田俊一郎編曲)
昨年の連盟大合同で好評だったゴスペルの第2弾。
そして、2日間の合唱祭の締めくくりとして皆さんで「故郷」を。
(Sop.末松)
LINER NOTES |
■緑濃き季節■
緑濃き季節となりました。
京田辺校地の学生課に就任してから1年、まず手始めにホール企画(映画)とスポーツイベント等の新規事業をスタートさせ、さらに次年度用のプログラム検討に乗り出したところで今出川校地(学生課)に呼び戻されることになりました。これからが面白いところだったのですが、今出川にも大きな事業があるのでいたしかたのないこと。お陰で通勤時間は徒歩5分になります。ちなみに、大学には決して学生課しかない訳ではありません。(というか両校地合わせて7人しか居ない。職員総数150人)
== 1. さて、先日(もうずいぶん昔のことのよう)の法政アカデミーの演奏会では本当に久しぶりに心地よく指揮させていただきました。私としても、法政の人にも喜んでももらえたことで、唯一絶対の師匠である(故)福永先生に、ほんの少しだけの恩返しが出来たような幸せな気分です。裏方等で尽力してくださった皆様、快く駆けつけてくださった方々ありがとうございました。浅井先生が「今日はよどこんのメンバーに会えたことが本当に嬉しかった、こんな気持ちの良い合唱団とは知らなかった。みんな生き生きしてる。」とおっしゃっていたこともありがたかったですが、法政の学生のフェアウェルコンサートを兼ねた大切なステージに立てたこと自体が嬉しかったです。合唱は「出会い」だと私は言い続けています。私は福永陽一郎に出会い、その教え子である法政アカデミーの学生と再会した訳ですが、我々も根気よく合唱を続けることで、ここで出会ったたくさんのメンバーとも再び出会うことがあるかもれません。一人で合唱が出来ないことからも明らかなように、様々な人との出会いを繰り返し、合唱を続けることで必然的に人間関係と情感の共有と交流という豊かな内面を織り,uセ毆)していくことが出来るのかもしれません。
いずれにしても、「表情ある歌」が歌えたことは本当に収穫でした。
もちろん 先回は条件が良く、OBの方や学生が助っ人的にオンステしてくれたことによるところは大きいです。70名で歌うととても気持ち良いということが分かった訳ですから、人数アップに向けて努力すると共に、また何らかの機会(合唱祭とか、コンクールとか、あるいはクリスマスパーティとか)では周辺?の方々とも一緒に歌えるような状況を作りたいですよね。
さて、次回の演奏会では藤井宏樹先生をお迎えします。
客演シリーズの3年間の3年目ですので、関西の合唱人が注目し、客席を唸らせるような演奏をしてみたいです。「よどこん」のチャレンジはまだまだ続く訳です。
==
2.
話題は変わります。
前々から関わりもあり、時々指導にも行っていた「畷ジュニアハーモニー」(本拠地四条畷市、20名程度の合唱団)ですが、70歳を越えてられた前指導者(10年前に創設)の南川先生が体力の限界と引っ越しを理由に引退されることになりました。解散か別の指導者で継続するかという選択の中で、子供たちの「伊東先生?なら続けても良い」という声(…があったと南川先生から説得されたが、本当かどうか疑問…)を無視できず、また一生懸命育てられた南川先生や子供らの姿を見てきた私としては、このまま解散してしまうのを見過ごすのも辛かったので、この4月から可能な範囲で引き受けています。とは言え、実際には身動き取れない状態ですので、毎回の練習内容を打合せの上、全く指揮者経験のないOGである副指揮者が指導するという形態をメインに取っています。試行錯誤しながらもコダーイメソッドを軸にした練習プランはプランを練る側の勉強にはなりますが、指導者を育てながら子供たちに合唱を教えるのは至難の業。私自身が前に立った時も、たかだか3時間の練習で死ぬほど疲れてしまいました。(しかしその後「なにコラ」へ行ったら、そっち,u「痢w)方が手に負えないところが問題ですが。)
でも、昔でいう近所の「ちびっこ集団」が見られなくなった現在、学年を横断した児童合唱団のようなコミュニティの価値は再認識されてくると思います。学校土休に対応して地域の果たす役割の一つにもなり得るでしょう。「畷ジュニアハーモニー」に関して言えば、音楽を取り巻く環境や少ない団員数を考えると前途多難なことばかりですが、私自身は最初から結果が見えたことよりは、どうも困難な方へ手が伸びてしまいます。大袈裟に言えば、ジュニアというカテゴリーは「学校」「会社」「主婦」という日本の近代化への踏み台(と副産物)をターゲットにしてきた「日本の合唱界の基本構造」に別の切り口を与えるようにも思いますので、合唱について幅広く感じ思考する契機にでもしていければと思っています。
小さい頃から音楽や合唱に親しみ、豊かな感受性を持ちながら合唱を続けていってくれるような子を育てていかねば
と思っています。私自身の経験値も少ないので、また、アドバイスやお力添えくださいね。
誰か、近所で入団希望の人がいたら声かけてください。(小1〜中高生まで可能です)
内山家ののんちゃんはすでに団員。合唱祭が私にとってもデビューステージになります。どきどきものですが、よろしければぜひ見に来てくださいね。
P.S.
4月から小学校に入った子供も、今まで一人で道を歩いたことすらなく「集団生活に馴染むかどうか…」と周囲では大心配していましたが、入学1週間で遅刻2回(どんな状況でも決して走らず)、忘れ物4件(家+学校)、という状況でわりと平然としていましたので、今のところはほっとひと息。(心配すべきポイントが違うのでしょうが?)
いとうけいし
●REPORT●わたしのコンサート評 |
「The TARO Singers」 於:神戸新聞松方ホール(2002年4月17日)
テナーhatabo@九州からの流れ者です
新聞の読者プレゼントでこんなコンサートに招待されました。
子供にカレーと多少のお菓子を与え、妻と二人で行ってまいりました。
4月17日(水)雨、神戸新聞松方ホールにて19時15分開演
指揮:里井宏次 合唱:The TARO Singers
主催:神戸新聞文化財団・コジマコンサートマネジメント
前売り3500円、当日4000円、私と妻はご招待ムフフ
パート構成:S5・A6・T4・B4
お客さんちょっと年齢層高し、香水は控えめにしてねマダム。
客の入り具合、空席目立たないほぼ満席
たろーさんたちのレパートリーの中から演奏したい曲、聴いて欲しい曲を選んだコンサートで、いままでの「あゆみ」的意味のあるステージという位置付けだそうな。
武満徹・アレグリ・ハウエルズ・プーランク・ブルックナー、順に日本・イタリア・イギリス・フランス・オーストリアの5カ国の曲をアカペラで堪能してくださいということで、堪能しました。以上。
ってこれじゃコンサート評にならないですな。
薄れ行く記憶をたどります。
武満徹、暗転の中メンバー登場、暗転のまま「翼」。歌いだしが妙にはっきりとした、あいまい母音。曲の中盤まで暗転、後半徐々に明るくなるという予想は見事にはずれ、途中唐突に明るくなりました。女性の衣装は黒のロングドレス、ノースリーブ、胸元ちょっとV、背中ちょっと丸い穴、なかなかせくすぃ〜。「死んだ男の残したものは」は林光編曲の方が好き。
アレグリ、システィナ礼拝堂の門外不出の秘曲「ミゼレーレ」、モーツァルトが1回聴いただけで楽譜に採ったという逸話で有名・・・らしいですね。恐るべしモーちゃん。テナーが詠唱したあと合唱が入るパターンの繰り返し。いい歌ですね。合唱部分は半数態勢で臨んでいたようですが、全員で歌っているのと違いがほとんどなし、一人一人の実力が高い証だけど、なぜ半数なのか?
ハウエルズ、記憶にございません(^_^;
プーランク「七つの歌」、おふらんすの粋な作品、フランス語の合唱曲って私が知ってるのはフォーレの「ジャンラシーヌ頌」くらいなので貴重な出会いですね。いつか歌ってみたい作品です。シルブプレ。
ブルックナー、またしても記憶にございません(^o^;
(かなり記憶が欠落している部分がありますな)
と、まあステージはこんな感じ(どんな感じだ)でつつがなく進みました。
プロの合唱団ですからもちろん技術は素晴らしいです。声量も19人とは思えないパワーでホール全体に響いてました。どんな高い音も、どんなフォルテシシシモも顔色一つ変えず、楽チンな顔して、しかも声が口から出ているようには聞こえないんですよね、口から30センチほど前あたりに声の塊があって、そこから声がドンドン送り出されているように聞こえる感じでした。わかります?
しか〜し、全曲楽譜を持って歌っていたのは残念、プロでしょ、レパートリーでしょ、と思ったのは私だけ?私も暗譜遅いのでこの話はこれくらいにして・・・
指揮者里井さん、ステージが終わるたびお客さんの方を向いて、両腕をひらき顔のあたりの高さまで持ち上げ、手のひらを自分の方に向けるポーズは自信たっぷりに「どうですかお客さん」と誇らしげに見えましたが、本当の気持ちは分かりません。
TARO Singersの「TARO」は主宰者である里井宏次さんの「さとい」からつけられたそうで(さとい→さといも→たろいも→たろー)というネーミングは「ユーモラス」とパンフのプロフィールには表現されてますが、「どうですかお客さん」と私は問いたい。
まっ、余計なお世話ですけど。
大阪拠点のプロの合唱団ですので、これからも陰ながら応援していきたいと思います。
次の演奏会は7月26日いずみホール「ドイツ合唱音楽の響き」です。
よ〜し、また招待されるぞ〜!!\(^o^)/
●RLAY● |
“世界の宮崎”を決定的に定着させた『千と千尋の神隠し』を、ロードショーで見るつもりが見逃してしまいました。もうあれから随分経ったし・・・と思いきや、未だどこやらで上映されているらしく、したがってビデオ配給されているはずもなく、仕方なくこれを借りたのでした。しかし、さすが押しも押されもせぬ世界の宮崎駿!見終わったとき、手のハンカチはまたもや涙か鼻水かわからない混合物でぐしゃぐしゃになっておりました。いつもながら、こんなもので顔を拭くのはいい加減に止めたほうがいいとおもいつつ。。
この作品に関しては、ご覧になった方のほうが多いと思います。あれこれ書くより、まず宮崎監督のインタビューコメントを引用いたしましょう。
上記のコメントで宮崎監督は、「生きるということ自体にどういう意味があるのかということを問わなくてはならない時代が来た」と言っていますが、生きるということは、いつの時代にも重大なテーマであったわけで、何も今始まったことではないとおもいます。ただ、近代になって始まった「哲学史」だとか「思想史」だとかいった分野が熟してきた故に、現代ではそれら個々の思想が随分煮詰まってきたということではないかと思うのです。つまり現代は、生きるということについて、学ぶことのできる「歴史」や「思想」のサンプルを沢山持っているが故に、それらをひっくるめ、踏まえた上での「生きる」を考えねばならないというところが、非常に難しくややこしい作業なのではないかと。
ただこれは、哲学的にきちんとやればということで、思想史はシンプルです。17世紀の啓蒙時代にデカルトによって近代人が見出され、以来、神を否定すること=人間であることを否定することであった時代から、神なしで世界と人間が成立する時代への移行がなされ、20世紀は実存主義の時代となり、今に至るというわけです。
ところで、私がこの映画を見終わって思い浮かべたのは、『ツァラトゥストラ』の最終章の中で描かれている、ニーチェの次の言葉でした。
この世は深い、
『昼』が考えたよりもさらに深い。
この世の嘆きは深い――
しかしよろこびは――断腸の悲しみよりも深い。
嘆きの声は言う、『終わってくれ!』と。
しかし、すべてのよろこびは永遠を欲してやまぬ――深い、深い永遠を欲してやまぬ!
(氷上英廣訳『ツァラトゥストラはこう言った』/岩波文庫より抜粋)
この『ツァラトゥストラ』と『もののけ姫』は、成立にかなりの時代差があるとはいえ、いくつかの共通項を見出すことができるように思われます(なんといっても、『もののけ姫』のメインコピーは「生きろ」ですからね!!)。それらをいくつか挙げることで『もののけ姫』を考えてみたいと思います。
上記『ツァラトゥストラ』終楽章の中の断片には、ニーチェの永劫回帰の思想が遍く集約して表現されているのですが、この終楽章にはそれにふさわしく、さまざまな人間が登場してきます。預言者、王、良心的な学者、魔術師、法王、最も醜い人間、乞食、影・・これらは皆、神の死んだ時代において、生きるべき道を見失った絶望者たちです。この中の「最も醜い人間」は、非常に有名な一節ですが、このニーチェが描く醜怪な人間は、『もののけ姫』のエボシ御前(聖なる森を征服しようと、獣とそれを従えるシシ神に闘いを挑むタタラ集団の統率者)や、ジコ坊(エボシ御前を利用してシシ神の首を捕ろうとする坊主)のキャラクターと重なり合ってきます。エボシ御前の思想と言い分は、この「最も醜い人間」の言葉を借りれば、こうなります。
「神は、一旦死なねばならない。彼の同情は、少しの羞恥も知らない。人間のもっとも汚らしい部分を見、恐るべき厚かましさでその細部にまでもぐりこんでくる、このあまりにも同情深いものは、一旦死なねばならない。なぜなら人間は、そのような目撃者が生きていることに堪えることができないからである。」
この近代的人間の「生」に対する問題意識が、『もののけ姫』のベースには流れているわけです。そして近代人の手によって神は死んでしまったのですが、神を殺してしまった後人間はいかに生きるべきか、という問いが、『もののけ姫』のひとつの大きな主題であるのです。
さらに、『ツァラトゥストラ』では、ギリシャ神話の牧神の午後のモチーフが数ヶ所用いられています。
牧神の午後――正午、太陽が真上に位置するとき、地上のいっさいのものが皆陽光に照らされ、そのすべての影が消滅する。そのとき時間は止まり、静寂と美のなかに牧神が現れる。牧神の眠りを妨げない様に、一切の自然はまた息をひそめる、牧神の午後――
それは夢と現実が溶け合い「生」から離脱する時刻、そしてまた、認識の時刻でもあります。地上のいっさいの欲望や現実が無効となる瞬間、人は「力への意思」に支配される現実から、認識の幸福へと誘われるのです。
『もののけ姫』のシシ神(森を守る獣たちを統率する神)は、この半身半獣の古代の神の姿と重なってきます。中盤のシシ神登場の情景は、まさに牧神の午後を描写しているようです。森の中が煌煌とした明るみに照らされてシシ神がゆっくり泉に姿を現し、水を飲み、去っていく。その間、主人公アシタカは息を呑んでその姿をただ見つめている。森のすべての聖霊が息をひそめるその時間は、計りようのない時間で、気がつけばアシタカの傷は癒やされている・・・。
『ツァラトゥストラ』では、朝・正午・午後・夕暮れ・夜はそれぞれ、人生と密接に関連せられ意味を与えられています。人生の頂点としての正午と昼下がり。そして、夕暮れま近は、魂の幸福・平安そして休息のときです。これを踏まえ、最終部分の「酔歌」では、牧神の午後に代わって夜の深遠が歌われます。
「…あなたには聞こえないのか、秘やかにおそろしく、こころをこめて、それがあなたに告げているのが?古い、深い、深い真夜中が!おお、人間よ、しかと聞け!…深い「真夜中」は何を語るか?…過ぎ去った!
過ぎ去った!おお、青春!おお、正午!おお、午後!いまは夕暮れとなり、夜となり、真夜中となった…」(上記邦訳より抜粋)
夜の深遠とは、人生の終わりです。しかし、ニーチェにおいてはそこで人生は終わりません。夜の深遠とは、牧神の午後=「大いなる正午」の昼の認識の世界を、形而上学的に焼き直した世界です。人間の「生」は忌わしく、嘔吐をもよおすものである。しかしそれを逃げず、けっしてごまかさない。忌わしいものを肯定できるまでに、まっすぐに見据える。嘔吐をもよおすほどに忌々しいものであっても、自らが今来た道を肯定する。“そのいっさいが永遠に繰り返される”としても、それを喜んで受け容れよ!とニーチェは言います。そうして初めて、今来た道と今から歩む道がひとつに繋がり、世界は完璧になるのです。夜が深ければ深いほど昼は明るくなり、また、深夜も明るくなる。こうして世界は完璧になる――これが、あるがままを肯定し、その永劫回帰を願うニーチェの思想で、ツァラトゥストラを通して語られる「生」の姿勢はまさに、主人公アシタカの生きざまそのもののように思えるのです。
さて、こうしてかつての古代の牧神の午後が、近代において夜の深遠に移され、真昼と深夜が溶け合い、世界はひとつになります。現実と認識が支配する世界と形而上学的世界が人間の手で融合されたわけです。思うにニーチェは『ツァラトゥストラ』において、牧歌的な古代への回帰を促すでもなく、近世的キリスト教的な正義の人間像を提唱しているのでもなく、それらとは全く違った道を模索しているようです。そして、『ツァラトゥストラ』から1世紀以上を経た今、それをわかりやすく焼き直したような『もののけ姫』が圧倒的支持を得ているという事実は、彼が模索した道が今だになお模索しつづけられているということに他ならないのではないか、私達はまだまだ近代の殻を破ることができず、ただその周辺をぐるぐると回りつづけているだけなのではないか、と思われるのです。前世紀が残した課題を克服するこの21世紀の中心的思想がどんなものになるのか、それらの輪郭はぼんやりとは浮き上がってきたようですが、ポストモダンがどんなかたちで終焉を迎えるのか、「脱近代」がどんなかたちでなされるのかは、まだまだ見えそうにないのということなのであろうか。それとも、「脱近代」の扉を開ければそこにはまた近代が立ちはだかるのでしょうか・・・
最後にニーチェの箴言をひとつ。
「彼は幸福である。だが、それは重い重い幸福だ。やがて、梢に風が吹き始める。午後が過ぎた。生がふたたび彼を自分のほうに引き戻す。盲目の目をした生が。その背後からは生の従者、つまり欲望・偽装・忘却・快楽・殺戮・盛者必衰の理たちが襲いかかってくる。こうしてまた夕べがやってくる。朝方よりも嵐のような、朝方よりも活動に富んだ夕べが。」(『漂泊者とその影』より)
そうして夜が来て、朝が来て、また夕刻になり夜が来て、朝が来て・・・
本当に「永劫」繰り返すんですかね、宮崎監督・・・?
●合唱連盟便り● |
合唱連盟関連情報
●行事予定(○大阪府、◇関西、☆全日本、▽その他)
6月 ◇ 1(土) 京都府合唱祭 京都会館 2(日) ◇ 8(土) 兵庫県合唱祭 伊丹市立文化会館いたみホール 9(日) ○ 15(土) 第39回大阪府合唱祭 コスモスシアター(貝塚市民文化会館) 16(日) ◇ 15(土) 奈良県合唱祭 やまと郡山城ホール 16(日) ◇ 16(日) 滋賀県合唱祭 栗東芸術文化会館さきら 7月 ☆ 20(土) 第16回おかあさんカンタート in かなざわ 石川県立音楽堂 21(日) ▽ 27(土) 第19回宝塚国際室内合唱コンクール 宝塚ベガ・ホール 28(日) 入賞団体による演奏会 8月 ◇ 3(土) 第45回オール関西コーラスキャンプイン高野山 高野町公民館&遍照光院 4(日) ☆ 3(土) 全日本ジュニアコーラス・フェスティバル2002 横須賀芸術劇場 4(日) ○ 11(日) 第1回大阪ヴォーカルアンサンブルコンテスト 池田市民会館コンベンションルーム ☆ 23(金) 第25回全日本おかあさんコーラス全国大会 東京文化会館 24(土) 25(日) 9月 ○ 8(日) 平成14年度大阪府合唱コンクール(中学校・高校の部) コスモスシアター(貝塚市民文化会館) ◇ 23(月) 第57回関西合唱コンクール(中学校・高等学校部門) 伊丹市立文化会館いたみホール 10月 ◇ 12(土) 第57回関西合唱コンクール 一般部門(おかあさん) 池田市民文化会館アゼリアホール 13(日) 一般部門(その他) 14(月) 大学・職場部門 ▽ 15(火) 東大寺大仏開眼1250年記念式典「廬舎那仏讃歌」奉納 東大寺大仏殿前広場 ☆ 26(土) 第55回全日本合唱コンクール全国大会 高等学校部門 神戸国際会館こくさいホール 27(日) 中学校部門 11月 ◇ 4(月) バッカスフェスタ(第4回関西男声合唱祭) 伊丹市立文化会館いたみホール ◇ 10(日) 和歌山県合唱祭 和歌山市民会館大ホール ▽ 10(日) 第11回音楽の森合唱フェスティバル 服部緑地野外音楽堂 ☆ 23(土) 第55回全日本合唱コンクール全国大会 大学・一般A部門 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 24(日) 職場・一般B部門
●第1回大阪ヴォーカルアンサンブルコンテスト について
(11(日)池田市民会館コンベンションルーム)
東京・神戸などでは早くから開催されていましたが大阪でも今年より連盟主催で開 催するようです。私もスポット参加でしたが、混声のアンサンブル(女声6、男声4) で宝塚のコンクールに出たことがありますが、大人数とは別の楽しさがありますよ。
よどこんから幾つかユニットで参加してみるのもいいかもしれません。
概要は下記の通りです。
・部門 青少年部門(クラシックの部、ポピュラーの部) 一般部門 (クラシックの部、ポピュラーの部) 青少年部門は指揮者・伴奏者を除くメンバー全てが19歳以下が条件 ・人数 2〜16人 ・演奏曲目 自由(ただし、曲間を含めて8分まで) ・参加費用 青少年部門(800円/人) 一般部門(1500円/人、但し学生1000円) ・審査 各部門3名の審査員で審査し、優秀な団体を表彰
(文責:林 和之)
How do you do? |
みなさんゴールデンウィークはいかがでしたか? 私は10連休で骨抜きなりつつも(笑) 連休の後半には大学での合宿以来、久しぶりに小豆島に行ってきました。 さて、今回は女声2名、男声3名の5名をご紹介します。 皆さん私より若いぴちぴちの人たちです。
※本コーナーはプライバシー保護のため、ONLINE版には若干の制限を加えています。
Infomation |
●わしざきはるの演奏会情報● −心の財産をみつけよう−
年度替わり直後の4月の職場は、いやぁもぉ、あんまりはたらいたら〜いのちがあぶないぜ〜ということばどおりの大変な日々でした。時間中は絶え間ない対人業務に追われ、デスクワークにとりかかれるのは5時過ぎ!休みの日も朝から晩まで、際限なく増え続ける書類の山と戦ってばかりで、何とか、よどこんの練習に行く時間だけはキープしても、聴きに行きたい演奏会に行く時間なんてとてもとれそうにないぞ、と思っておりましたが、そんな状態だからこそ、むしろ、是非聴きに行くぞぉ!てな気になって頑張って仕事を進めて時間をつくって、演奏会場まで行ってしまうんですよね。こんなときに聴く心温まる演奏は、普段以上に嬉しい、シアワセな気分にさせてくれて、音楽の有難味がよーくわかるのです。わたし達も、良い演奏を目指しましょうね。
MAY・5月 | ||
18・土 | 荻窪音楽祭主催「オペラアリアの夕べ」 | 東京・アミーチサロン |
19・日 | なにわコラリアーズ第8回演奏会 | 伊丹市立文化会館いたみホール |
26・日 | 東京六大学混声合唱連盟第44回演奏会 | 東京文化会館大ホール |
JUNE・6月 | ||
2・日 | 第39回京都合唱祭 | 京都会館 |
2・日 | 横浜ルミナスコール | 神奈川県立音楽堂 |
3・月 | 関西学生混声合唱連盟第33回定期演奏会 | フェスティバルホール |
8・土 | 大分市民合唱団ウィステリアコール | 大分県立総合文化センター |
9・日 | 関西歌劇団第81回定期公演「エフゲニー・オネーギン」
・・・太田裕子先生が出演されます | 尼崎アルカイックホール |
15・土 | 第39回大阪府合唱祭(〜16・日) | コスモスシアター |
15・土 | 早稲田大学混声合唱団・同志社学生混声合唱団CCD交歓演奏会 | 長岡京記念文化会館 |
30・日 | 第51回東西四大学合唱演奏会 ・・・藤井宏樹先生が合同演奏指揮されます | ザ・シンフォニーホール |
JULY・7月 | ||
6・土 | 豊中混声合唱団 | ザ・シンフォニーホール |
7・日 | 京都府立大学合唱団・京都大学音楽研究会ハイマート合唱団 | 長岡京記念文化会館 |
13・土 | 藤沢男声合唱団 | 神奈川県・藤沢市民会館 |
13・土 | 合唱団ゆうか | 韮崎市文化ホール |
13・土 | 松下中央合唱団 | ザ・シンフォニーホール |
14・日 | 混声合唱団京都木曜会 | 八幡市文化センター |
14・日 | 神戸中央合唱団 | 神戸新聞松方ホール |
21・日 | 大阪混声合唱団 | いずみホール |
21・日 | 合唱団ゆうか | 北とぴあさくらホール |
27・土 | 第19回宝塚国際室内合唱コンクール | 宝塚べガホール |
28・日 | 宝塚国際室内合唱コンクール入賞団体演奏会 | 宝塚べガホール |
AUGUST・8月 | ||
3・土 | 北海道大学合唱団・京都大学グリークラブ・同志社グリークラブジョイントサマーコンサート ・・・伊東恵司さんが合同演奏指揮されます | 文化パルク城陽 |
3・土 | 全日本ジュニアコーラスフェスティバル2002(〜4・日 | よこすか芸術劇場 |
23・金 | 第25回全日本おかあさんコーラス全国大会(〜25・日) | 東京文化会館 |
“春うらら”ならぬ“春愁”の内政です。
“よどこん”の第一番札所?のミ−ド社会館が、最近取れなくなり、アタマも痛く胸も重い近頃です。
突如現れた伏兵の名は“コ−ドリベットコ−ル”
9月末迄の第2,4,日曜日を2月から先取りしているツワモノです(笑)。
ミ−ドは昔からのお馴染みなので、一縷の望みを持ちつつ調整を尚お願い中なのですが.....。
このゴールデンウィークに、合唱連盟主催の「コーラスワークショップinはこだて」に行ってまいりました。長谷川久恵先生の講座がとても勉強になりました。まだ足のピクピク動いているイカ刺しも美味しかったし…。(ウ〜、ザンコク!!)
さて、次号7月号は、7月の第1回練習日の発行予定ですが今のところ未定です。原稿締切はその2週間前になります。「こんな記事、書きたい。」と名乗りをあげて下さい。 宜しくお願いします。 (A.O.)
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